---「草サッカー」から始まる。

 競技の激しさ、練習の厳しさ、規律や礼儀、自分との戦いの世界ですね。とても大事なことだと思います。でも、それって大人の世界も同じですね。

『サッカーは子供を大人(紳士淑女)にし、大人を子供にする。』という名言があります。私もそう思います。

でも現在のサッカー環境ってホントにそうかな?大人の世界を子供に押しつけるようなサッカー環境を感じていた私です。サッカーをする前に大人であることを要求されるようなのはあべこべですね。

サッカーを心ゆくまで遊べたら、サッカーというスポーツそのものが子供を大人にしてくれる。その環境を作りたいと思います。「心ゆくまで遊べる」ということは、楽しくて、好きで、真剣だということだと思っています。

この地域での女子サッカー(多くの地域でも)は、まだまだマイナースポーツ。なでしこリーグの選手だってプロで生活ができているわけではありません。男子のようにビジネスモデルにはもちろんなりません。男子と同じ育成システムでやっていくのは荷が重いのが女子の現状です。まず草サッカーから始めよう。サッカーの原点に帰って楽しもう。それが『ヴィナス八ヶ岳FC』を立ち上げた理由です。

 

 子供から大人までが家族単位で参加して、同じピッチで一つのボールを追いかける。20年ほど前からそんなふうに活動している「Woods FC」が母体です。練習試合でも初参加の人もいて、ユニフォームも揃わずビブスで試合するようなチームです。家族がワンコインで参加できるウッズの練習日にはさらにいろいろな人が参加します。誰が来ても,サッカーしたいならどうぞ。怪我と弁当は自分持ちね。そんなウェルカムなチームがウッズFCです。

 ヴィナスFCのチーム活動にかかる経費の一部を、このウッズのワンコイン参加システムに支えてもらいます。そして草サッカー仲間として、いろいろな面でチームを応援してもらいます。地域に根付いたサッカー文化をそんな風にして作りたいと思います。

 当然ながら、練習は基本的な反復練習とゲームが主体になります。固定されたメンバーではないので戦術を浸透させるような練習はなかなかできません。その中で個人ごとの到達点に応じて、次のテーマを与えていくことで、同じ練習の中でそれぞれのテーマにトライしていくことになるでしょう。その点で他のチームでサッカーしていても、体力と時間が許せば参加は可能です。もちろんヴィナスFCでチーム活動をしてくれれば理想的です。そして自分自身と自分のサッカーを考えながら、モチベーションを高く持ち続けられるようにしたいですね。

 ヴィナスの目標は、世界中どこに行っても、参加したゲームの中で自然にボールが集まってくるような高い技術と判断力をもった、チームメイトから信頼される選手の育成です。目標ですから・・・高く!

 

 私が長いことサッカーに関わっている理由の一つに、「本当に輝く瞬間」が見たい。というのがあります。何年かに一回ピッチの中でチームが輝くことがあります。それは言葉ではとても表せない、ただ「本当に輝く」のです。数回の経験ですが、至福の時です。勝ち負けを超えたところにある瞬間です。私と選手とその場に居合わせた人にしか見えない光です。たぶんサッカーの神様の光です。選手にもぜひ経験して欲しいものです。私は青息吐息でチームを指導しますが、ただ、いつかその瞬間をもう一回見られればと願ってやっています。